ここ3日ほど、一連の温泉むすめの件に関してずっと考え込んでしまい、脳がかなり疲弊しているのを感じます。
これまでにも幾度となく同じようなことが繰り返されてきたように感じるため、その度に考えていたことを、整理も兼ねて一度書き留めておくことにしました。
事の経緯や詳細は調べれば分かることなので、ここではひとつのニュース記事へのリンクを貼るだけにします。
まず私が疑問に思うことは、論点がずれたまま話が進んでしまっていることです。
仁藤夢乃さんは、温泉地の振興を目的とするプロジェクトを担うキャラクターに、性差別・性搾取的なキャラクター付けがされていることを批判しています。
具体的には、キャラクターの紹介文に、「肉感的でセクシー」「混浴を気にしない」などの文言があったり、キャラクターに性行為を連想させるような発言をさせていたりすることなどです。
つまり、こういった「性差別・性搾取的なキャラクター付けをされている“娘”たちが、観光庁も関わる公衆施設の振興を担っていること」について議論がされるべきなのではないでしょうか?
仁藤さんのツイッターでの発言に対し、「#温泉むすめありがとう」というタグを使って、温泉地の魅力および温泉むすめの人気の高さを示そう!という活動が盛り上がっているようですが、上記の理由からそれは的外れであるように思います。
温泉地の魅力の有無や、温泉むすめプロジェクトの需要の有無について述べることは、今回の批判に対する応答としてはズレています。
また、温泉むすめプロジェクトに関わる声優さん数名が「#温泉むすめありがとう」のタグを用いて、自身が声をあてるキャラクターおよびそのキャラクターの担当する温泉地との思い出を語るツイートをしていたことも個人的にはショックでした。
ご本人たちは、なぜこのタグが生まれたのか、その経緯を知らなかったのかもしれません。しかし、発信後にそのツイートについて言及するファンや周りの人間が一人もいなかったのかと思うと、声優さんのいる業界の未成熟さ、もしくは偏りを感じずにはいられません。
声優さんも、プロとして仕事を請け負うひとりの社会人なので、自分のしている仕事が社会的にどのような意味を持つものなのか、自分がその仕事をすることによって周囲にどのような影響を与えるのかということについては考えていてほしいし、自覚的であってほしいです。
声優さんはキャラクターのみならず、“人間”を表現するお仕事でもあると思うので、このようなことは決して望み過ぎではないと思っています。
私はアニメも漫画も可愛いイラストも声優さんも旅行も温泉も好きだからこそ、それらが性差別や性搾取に加担するものであってほしくないです。
私も漫画やアニメを含む様々なカルチャーを心から楽しみたい。
好きなものや楽しいものの中に、誰かが差別・搾取されている表現が紛れている現状に慣れたくない。
そのたびに自分の心が少しずつ消耗し、疲弊していることを見過ごしたくないし、人が傷つくことにも鈍感になりたくない。
誰かを犠牲にしなくても成り立つ温泉地の振興プロジェクトが進んでほしいし、温泉地を訪れた際には、誰も差別や消費、搾取をされていない状況の中でのんびりとくつろぎその地を楽しみたい。
前提として、すべての人の安全と安心が守られていてほしい。
仁藤夢乃さんは、温泉地の振興を否定したいわけでも潰したいわけでもないと思います。
現行のプロジェクトの中に、性差別的な要素や性搾取的な要素が入り込んでいることを指摘しているだけです。
決して、誰かと誰かを分断したいわけではないと思います。
みんなが安心して心地よく様々なカルチャーを楽しめるよう、論旨をつかみ、建設的な議論が交わされることを望みます。
(2021.11.17 22:27 追記)
最後の一文、「建設的な議論」という言葉の響きがなんだかえらそうというか冷たい印象で気になったので、補足します。
私は、互いの未来に繋がっていくような話し合いが重ねられていく社会を望みますし、自身もその実現に努めたいです。