みぞグミBLOG

描いた漫画/読んだものについての感想/日記を置いています。

読書note5:『はじめからその話をすればよかった』

『はじめからその話をすればよかった』
著者:宮下奈都
発行:2013年10月20日実業之日本社

https://www.amazon.co.jp/はじめからその話をすればよかった-宮下-奈都/dp/4408536326/ref=tmm_hrd_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=


本書は宮下奈都さんのエッセイや掌編、書評をまとめた一冊になっています。
タイトルからして「もう最高だ~!」と思い、ワクワクしてしまいました。


『はじめからその話をすればよかった』というタイトルのエッセイ集。
もうそれだけで、どのような温度でどのような雰囲気を纏ったエッセイが収められているのか想像ができ、フフっとほほ笑んでしまいました。

私が特に好きだったエッセイは、『わからないということ』と『みんなより一日分よごれている』です。

『みんなより一日分よごれている』は、宮下奈都さんが忙しく過ごしていた大学時代に、お風呂に費やす時間を浮かせて読書に充てていた、というお話です。

一日分のよごれくらい、どうってことない。浮いた時間で本を読む。お風呂やシャワーの時間だけで読み終わるわけではないので、結局そのまま夜更かしをすることになるのだけど、お風呂に入る煩わしさ(おもに読書を中断しなければならない困惑だ)から解き放たれ、のびのびと本を読むことができた。(本文p.136)

そんな宮下さんが、その時と変わらずに、今度は読書好きの3人のお子さんとお風呂の時間を節約して読書を楽しんでいることも描かれていて、すごくいいなあと思いました。

時間は、好きなことに使えばいいんですよね。
大人になるにつれ、日常生活を回すことに時間もエネルギーも奪われてしまい、したいことに没頭したり夢中になったりするという時間はどんどん縮まっていってしまいました。
私も、子どもの頃は「本の虫だね」なんて言われるくらい本が大好きだったのに、今では週に1冊読み終わるかどうかという風になってしまっていて、なんだかなぁ…と思いました。
なのでこのエッセイを読んでからは、好きなだけ本を読むぞ~!という気持ちになりました。
このエッセイ集も、読み始めた時にちょうど風邪を引いていしまったのですが、椅子に座っているのもつらい中で「でも読みたいよ~」という気持ちに従って、なんとか座椅子を固定し楽な姿勢を見つけて最後まで黙々と最後まで読んでしまいました。

掌編もいいです。
宮下さんがその時書こうと思った事柄について、とても丁寧に描いているのが伝わってきます。
しっかり丁寧に描かれているのに、すごく軽やかというか、肌触りがいいんですよね。
それは心地いいというのとは少し違って、内容としては3月11日のことだったり、憲法9条改正についてだったりと、人によっては今読みたくない、そういうことに割く心の余裕がないと遠ざけてしまいがちなことなのに、肌触りがいいので読んでしまうんですよね。
みんなが忘れてはいけないこと、みんなが考えるべきことを、敬遠させず当たり前に傍に置いてくれる感じがして、すごいなぁと思いました。
これらのことは誰にとっても他人事でなく、自分の暮らす世界の中で起こっていることなんですよね。
どれも間違いなく自分と関係していることなのに無関係のように暮らせていることは、自分が鈍感になってしまっているんだ、そういう自分でいられる環境が奇妙なんだ、と気付かされます。
1人で持つには重たい荷物も、みんなで持てたら…と思います。

書評の中には私の好きな瀬尾まいこさんの『僕の明日を照らして』や中脇初枝さんの『きみはいい子』も取り上げられていて、久しぶりに本棚から持ってきて読みたいなぁと、次の本へ続く道も作ってくれました。
素敵な一冊です。
みなさんもぜひ^^